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田の海岸は、急峻な地形と要塞拠点として隔離されていた地であったことが幸いし、山と海の連続性が保たれ、山地には自然度の高い照葉樹林帯、シカ、イノシシなどの野生動物の展開が見られ、海域では、豊かな藻場が形成されている場所である。一方、大阪湾ベイエリアの開発整備、明石海峡大橋の開通、第二国土軸構想等により、近年淡路島の位置づけが見直されており、由良地域においても、国内他地域や世界との交流が飛躍的に高まることが予想される。
しかしながらこの反面、由良地域は、第一次産業をべースとしてきた地域特有の問題として、高齢化、若者の流出という問題を抱えている。また、由良湾では、大阪湾湾奥部からの影響や地域での生活排水、ゴミの投棄等により、徐々に環境が悪化し始めている。Fig.1は、このような由良地区の環境の悪化を予め知っておくために、総合的環境調査に先立って実施したヒアリング調査の結果である。図より、多くの閉鎖性海域で起こった環境悪化の前兆を見ることができる。
2.2 由良地域の環境調査結果
(1)海域環境調査結果
水質は、由良湾の内外で大きな相違はないが、大阪湾湾奥部における計測結果とは異なり、外洋性とも言えるほどに良好である。また、湾内における海水交換、垂直混合も適度に行われているようであるが、湾内北部には渦上の流れ、湾内南部には一部停滞性の水域も存在しており、富栄養化の指標である窒素、リンの含有が高い結果が得られた。水質悪化の前兆であると判断される。湾内の底質は粒度の小さい砂、シルト、粘土が主成分で濃い灰色であるが、硫化物特有の臭いはなく一応は健康な状態といえる。湾外では、粒度の大きな砂礫が多く含まれる。底生生物は湾内では多毛類の種類が多く、また湾外では貝類、節足動物の種類が多く、生物相は湾奥部に比べて豊かであることがわかった。湾外北部の大阪湾最南部で、瀬戸内海では絶滅に瀕しているナメクジウオが確認された。但し、湾内の底泥中に汚染の指標生物

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Fig. 1 Results of pulic hearing on changes of environment in Yura area

 

 

 

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